2007年8月8日水曜日

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研究開発とアウトソーシングとLL

変化のスピードがやたら速い今日この頃、ソフトウェア研究開発において、世の中ざっくり2つのアプローチで乗り切ろうとしてるのかなと思う。
  1. 安いところにアウトソーシング
  2. 変化に対応できるような高速軽量開発
アウトソーシングによるコスト削減と、研究所内でLL開発のチームを作ってどんどん生産性を挙げるという2つのアプローチがありえる。

『アウトソーシング+管理コスト』 vs 『LL開発のチームの醸成』

という構図。最近、ソフトウェア開発においてこの力関係に変化がおきてるのは、あちこちで言われてる。
まさに研究開発アウトソーシングの真っ只中にいるので、とりあえずもう少し深く考察してみる。

研究よりのアウトソーシングの場合、一番大変なのが、研究機関の利益と委託もとの会社の利益が異なること。
会社のいろいろなしがらみを委託先の研究機関に理解してもらうことは、非常に難しい。
会社の事情を理解した上でのビジネスの芽と研究機関の研究成果の違いは大きい。
管理担当者は、会社という顧客とその先のエンドユーザ(たぶん)を見据えてアウトソーシング先をマネージメントしないといけない。(理想的には)
結局、根気よくコミュニケーションを続けつつ、うまくwin-win-winな解へ収束させていくしかないわけです。(妥協ともいう)
あと、ソフトウェアハウスへの開発委託と違って、研究委託の場合は会社の利益に結びつくようなコアの創造を求めるわけで、一段要求が高い。
なので、創造性を阻害しないように注意しながら、会社の事情を知った人がうまくコントロールする必要がある。

人件費の視点でよい組み合わせとしては、
  • 比較的大きめなプロジェクト: 比較的成熟した実績のある研究機関+比較的大規模なプロジェクトをまわせて会社の事情を理解したコミュニケーション能力の高いマネージャ
  • コアに絞った小規模: 超トップクラスの研究者+会社の事情を理解した専門家(+|兼)マネージャ
ということで、管理コストを数で薄めるか、超トップクラスを求めるか。ちなみに、前者は、一度に大量の投資をするといい人もアサインされやすいという特典がついている。
前者は、少しでも安い人件費のお手ごろな研究機関がいいだろうし、後者はターゲットが明確ならその分野の世界トップレベルの研究者(?)を捕まえるのがいいかもしれない。
ただ、ここにも一つ落とし穴があると思う。研究機関は基本的に広さより深さを求める傾向がある。なので、平気で4年くらい前の技術を使ってたりする。
寿命の長い要素技術研究の場合は、まぁ許容範囲かもしれないが、流行に左右されやすいアプリケーション研究の場合は致命傷になりかねない。
2年とかで大きく変化するソフトウェア業界特有の状況を考慮して、そのあたりに振り回されないようなところをうまく委託しないといけない。
何がしたいかを十分吟味した上で、適切なところを適切な予算を組んであたらないといけない気がする。

んで、2年で変化するようなものを扱う場合はどうすればいいか?
コアを持つベンチャーと組むのはありだと思う。もちろん、ベンチャーの利益を理解したうえで、win-win関係を構築する必要があって、うちみたいな研究所の場合、実は非常に難しいと思う。

というわけで、LLプロト開発ができるチームを自部署内作るのはありだと思われ。会社の事情はある程度分かってもらえているし、技術の蓄積にもなるし、そのスピード自体がコアになるかもしれない。
いまどき、それなりに使えるレベルのプロトがあっちゅう間にできちゃうのは、RoRあたりを体験した人は分かると思うけど、昔に比べると明らかにすごいコスト削減効果があると思う。なにより楽しいし。^^
お客さんに近いソリューション研究とかアプリケーション研究あたりには、特に効果的な気がする。まわせるサイクル数が違うし。

まとめ
まとめると、こんな感じか。
長期、大規模、比較的流行に左右されない先進的なもの、いきなりパラダイムシフトを狙う
『アウトソーシング+管理コスト』 ~ 『LL開発のチームの醸成』

短期、小規模、流行に左右されやすい、お客様に近い、継続的なサービス提供によるイノベーション狙い
『アウトソーシング+管理コスト』 < 『LL開発のチームの醸成』

ただ、ソフトウェア研究において、長期というのがどれほどあるのかは疑問。
ただ、異なる組織で異なる価値観に触れるとそこから生まれるものがあるかもしれない。
コミュニケーションを根気強く続けないとそのあたりの価値観の違いまで見えてこないかもしれないと思えば、アウトソーシングとか共同研究というのもいいかもしれない。
そのときにすぐに結果が出なくても、将来的にいろんな価値観に触れたことで生み出される可能性もあるし。
ああ、でもそのあたりもWebの発達のおかげで、安価で出来るようになってるのか。
きっと、あと3年もするとこの傾向は加速的に高まるかもしれない。

変化に強い何かを見つけるか、イノベーション生成機としてアイデアをすぐ実現する力を身につけるか。
難しい世の中だと思う。